アメリカ不動産を売却する日本人が直面する“FIRPTA源泉徴収”とは?
- 特定行政書士
- 8月7日
- 読了時間: 4分

「アメリカの不動産を売ると、15%も税金を差し引かれるって本当?」
実はそれ、**FIRPTA(ファープタ)**という制度の話。
アメリカでは外国人が不動産を売却した際、売却代金に対して“所得税の源泉徴収”が義務付けられていることをご存じでしょうか?
この記事では、アメリカ不動産を所有している日本人投資家や相続人に向けて、**FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980)**の仕組みを、最新情報に基づいて分かりやすく解説していきます。
FIRPTAとは何か?
FIRPTAは、アメリカにある不動産を「外国人」が売却・譲渡する際に、売却金額の一部をアメリカ政府が“先に”差し引いて徴収する制度です。
この制度が導入された背景には、アメリカ国内の不動産市場に対する外国資本の影響と、課税漏れの防止があります。日本人を含む外国人がアメリカで不動産を保有・売却する場合、原則としてこの制度の対象となります。
「外国人」の定義に注意
ここで言う「外国人」とは、**アメリカの非居住者(Non-Resident Alien)**を指します。たとえ永住権を持たずにアメリカに短期滞在していても、不動産を所有している場合はFIRPTAの対象となります。
どんな取引が対象になるのか?
「売却」だけではありません。FIRPTAは以下のような取引すべてに適用される可能性があります:
不動産の売却または交換
贈与や名義変更
清算や契約解除
法人を通じた不動産持分の譲渡 など
つまり、形式や理由を問わず、「アメリカにある不動産資産の所有権が外国人から他者に移る場合」は、広くFIRPTAの対象となるのです。
源泉徴収の仕組み
FIRPTAでは、譲受人(買主)やその代理人、またはエスクロー会社が、売却代金の15%(※2016年2月17日以前は10%)を源泉徴収し、IRS(アメリカ国税庁)に納付する義務を負います。
注意点:
源泉徴収を怠ると、買主側に納税義務が転嫁されるリスクあり。
そのため、買主は売主が「外国人(Non-resident alien)」かどうかを確認する必要があります。
売主がアメリカ居住者であることを証明するには、「Form W-9」の提出などが必要。
対応を間違えると…
「売ったのに手取りが大幅に減ってしまった」
というケースも珍しくありません。
でも安心してください。FIRPTAには**“還付(払い戻し)”**という仕組みも用意されています。
「15%全額が税金になる」とは限らない
FIRPTAで差し引かれるのは“仮の税金”であり、必ずしも最終的に納税するべき金額とは一致しません。
そこで登場するのが、**源泉徴収証明書(Withholding Certificate)**です。
源泉徴収証明書とは?
売主(外国人)は、IRSに対して**源泉徴収税額の減額・免除を求める申請(Form 8288-B)を出すことができます。
この申請が通れば、源泉徴収を“実際の税額”に近い金額にまで減らすことができる”**可能性があります。
たとえば:
実際の譲渡益が小さい(利益がほとんどない)
所有期間が長く、減価償却などで課税対象が少ない
個人ではなく法人名義の取引であり、別途納税処理される など
申請のタイミングと流れ
売却クロージング前までにForm 8288-Bを提出
※遅れると通常の15%源泉徴収が行われてしまいます。
IRSからの回答が出るまで、エスクローが源泉徴収額を一時保留
※証明書が発行されれば、その指示に従って払い戻しまたは減額が行われます。
通常、3ヶ月以内に処理が完了
※ただしIRSの処理状況によってはそれ以上かかる場合もあり。
申請しない場合はどうなる?
申請をせずに15%源泉徴収された場合でも、翌年以降に確定申告をして還付請求することは可能です。
しかし、この場合は還付までに1年以上かかるケースもあります。
専門家に相談すべき理由
書類作成のミスで時間がかかるケースが多発
日米の税務ルールが絡むため、日英バイリンガル対応が可能な専門家が望ましい
名義変更や遺産相続など「イレギュラーケース」では判断が分かれる
FIRPTAは“早めの対策”がカギ!
アメリカ不動産を売却する予定がある場合、
「売ってから考える」では遅いのがFIRPTA対策です。
売却予定が出てきた段階で、自分が対象者かどうかを確認
早めに税理士や不動産専門家に相談
減額・免除申請を視野に入れて準備を
これらのステップを踏めば、不要な税負担を回避し、手取り額を最大化することが可能です。
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